
-
見た目に反して、繭のようにふんわり軽い
-
店頭には色々なユグァがありました
-
白い粒々は米のコムル(まぶし粉)
-
最初はサクッ、後からもち米のもちもち食感!
「ユグァ」
ふんわり食感の宮廷菓子
サムギョプサル、プルコギ、タッカルビ……など、肉料理は韓国グルメに欠かせない存在ですが、今からおよそ1,000年前の高麗時代は仏教が国教とされていたので肉食の習慣がなく、代わりに穀物の栽培が盛んに行われていました。
やがて中国から喫茶の習慣が伝わって宮廷を中心にさまざまなお菓子が生まれましたが、当時のお菓子は宮廷の儀式に用いられるようなものだったので、庶民が揚げ菓子を食べないよう国王が禁止令を出したこともあったそうです。
今回ご紹介する「ユグァ」もそんな宮廷菓子の1つで、2021年に発行された50ウォン切手のデザインにもなっています。漢字だと「油菓」と書く、文字通り油で揚げたお菓子です。
ユグァを初めて見たときは、なんて味や食感が想像しにくいお菓子だろうと思いました。何かをまぶした細長い餅のような見た目なのですが、持ってみるとポン菓子のように軽く、繭のようにフワッとしています。
いざ口にしてみると、ふんわりサクサクした口当たり。小麦粉ではなくもち米が使われているせいか、段々ともちもちした食感に変わり、それが飴のように徐々に溶けていきます。日本の麩菓子をもちもちにした感じ、と言えば近いでしょうか。味は素朴で甘さ控えめ。ただし、油で揚げたお菓子なので、それなりのカロリーはあるようです。
お店には定番の白いもののほかに、緑色のよもぎ味、黄色のかぼちゃ味、黒の黒ゴマ味など、色々な種類が並んでいました。
ユグァ作りは、韓菓(ハングァ:韓国の伝統菓子の総称)の中でも特に手間がかかります。まず、もち米粉で作った生地を何日も発酵させます。それを蒸して平たく伸ばし、乾燥させ、低温と高温の油で交互に揚げます。揚げたものにシロップをからめ、最後にゴマ、松の実、米のコムル(まぶし粉)をかけてようやく完成です。これを家庭で作ろうとすると、なんと2週間かかることもあるそうです。
そのため、かつてユグァは貴重品とされていて、新婦から新郎の家への結婚の贈り物として使われていました。今でも祭祀や行事、正月に年始客をもてなす上菓子として登場します。
とはいえ最近はスーパーなどでも売られるようになり、茶菓子として気軽に食べられるようになりました。ユグァを食べる時は「伝統茶(茶葉だけでなく、果物や穀物、漢方などを材料とするお茶)」と一緒に楽しむのが一般的だそうです。素敵な時間を過ごせそうですね。
(2025年2月掲載)